インタビュー 3

先生は私のことを

翔子ちゃん

と呼んでくれている。


今でこそ何でも話してくれる

まるで祖母のような先生だが、

先輩から聞いていたイメージは違った。



「なんだか冷たいのよね…

作家って変わった人が多いけど

あんなに冷たく話されるのは先生だけね。」



佐野千代子


私が本を読むキッカケとなり

今の仕事を目指し、夢見た人。


柔かな物腰と、穏やかな口調ではあるが

きちんと切りそろえたショートヘアと

少し切れ長の目が冷たく見せるのか。


あんなに感動した物語を

本当にこの人が書いたのだろうか…

あの日の私には信じられなかった。


「そちらのかたは?」


私に向けられる目は鋭く、冷たかった。

メディアへの露出を避け、

自分は紙の上に生きていると言った先生。


掌に汗をかきながら

「アシスタントの井上です…」

と言うのが精一杯の圧迫感。


少しの間をあけてから

「そう…」

と、だけ言われた。


先輩と先生のインタビューは

淡々と進んでいった、というよりは

先輩の用意した内容では満足できないのか

全て肩透かしをくらうような温度差があった。


ありがとうございました、

と、予定より早く切り上げた先輩は

帰りの車で悪態を吐く。


「なんかさ…賞たくさんとってるか知らないけど、あの態度どうなの?

あーぁ、ほんと苦手、佐野千代子…あーぁ。」


タバコを吸いながら、

インタビューの走り書きの紙の端をクシャっとしながら窓の外を見る。


「…少し怖い…ようなイメージですね。」


控えめに言った私の言葉に


でしょー?しかもさぁ…

とグダグダと話す先輩。


この時は黙っておいたが

足速に帰る先輩の後を付いて行きながら

振り返った私に向けられたのは

…優しい笑顔だった。