とんとんとくん インタビュー

今はもう亡くなられてしまったけど、

当時テレビで高齢の女性作家が特集されてね、

あー、こんな人生いいなぁ、と思ったの。

それが言葉になってたのね。


「こんな人生いいなぁ」って。


そしたらその時同棲してて、

一緒にテレビを見ていた今の主人がね、

えぇ、秘書をしてくれています。

いい加減な性格の私には、とても助かっているんですよ。


そしたらね彼が言ったんですよ

「ちぃちゃんは物書きになりなよ。」

もう笑っちゃったわ。


「そんな簡単じゃないよ?」

って答えたらね、また言うのよ


「ちぃちゃんは物書きで俺は秘書になる。」

それも笑ったわ。

この人 働きたくないのね?って思ったの(笑)


でもね、その一言なんですよ、本当に。


あの頃 私は29でした。

夢がぼやぁと広がってきてね、

人生ったって大したことないんですよ、

薄っぺらいものを思い返してみたんです。


そこから私の作家人生は始まって、

お陰様で今も書かせてもらっています。


春の匂いがする午後の客間で

穏やかな口調で話しているのは

今年 作家歴30年 還暦を迎える

佐野千代子。


デビュー作で直木賞を取り

その後も数々の賞を受賞した。

小説、エッセイ、対談もする。


婦人向けの雑誌の連載が続く悩み相談では

長年 圧倒的な支持を受けている。


今や作家もメディアに出ている時代だが

彼女は頑なに仕事も自分も紙だけで生きていく

と言いテレビやラジオには出ない。


品の良さと、優しい言葉遣い

ぱぁっと明るい笑顔は人を惹きつける。

還暦と言えど素晴らしく女だ。


老若男女問わずファンが増えそうだが

彼女はテレビには出ないそうだ。